十八歳の地図/花形新次
 
頬に触れようとして
躊躇った手を
きみは引き寄せて
両手で強く握った

僕は静かにその手を離すと
小さく笑って
頬に口づけした

言葉は要らなかった
それだけで十分だった

このままでいい
このままがいい

ああ、愛しさで
僕の心はいっぱいだ

きみへの優しさの為に
僕はこの命を
くれてやれそうな気がした
初めて自分以外の為に
死ねる気がしたんだ

それは
まだ地図も描けていない
十八歳の頃のこと




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