誘い 蒼風薫/梅昆布茶2
街路灯に恋したらしいサルスベリがあって
幹はもう真っ直ぐぬは戻れないだろう
とわたしなどが案じなくともそれでも愛しくも切ない一本であり
九月の散歩道で出会うたびに花の
その数や勢いまでも(わたしなんかが)
気にしつつ 十月のいつだったかにとうとう
紅の一輪すらこの世から消えていた
かなしかったけれどある日に紅が見えて
吸い寄せらせるように間近で仰げばそれは
ただ一枚だけ紅葉したまるで
招待状だった
サルスベリの結実にまで思いを馳せたことはなく
曇天のその日に立ち位置を工夫して
空を背景に見上げれば人であるわたしの浅はかさを季の神に告げられたk
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