海への疑問/ヤギ
 
心のしっかりしている時間が随分増えた
しかし私は揺れ続けている
「世界は海のようなものだ」
という比喩は見事だと思う
それを受け入れるなら私はその海のどこにいるのだろう
海はひとつか
海の一部とはどういうことか
ひとつの海なら自身と周囲にこれほどの違いを感じるのは何故か
憧れ続けるのは何故か
何にか
いつか分かる時がくるのか
ひとつの海であると受け入れられる時が来るのか
しかし一滴の海に何が分かるのか
宇宙はあんなに美しく映るのにそれもただの反映でしかないのか
自身以外のことは推測でしかない
そしてそれは自身についても言えることだ
ならばこうして考える私は一滴の海ですらない
そんなものがひとつの海になるはずはない
海は海を思わない
海から生まれて海を否定している
海であるはずなのに
海でしかないはずなのに



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