晩秋の一頁 蒼風薫/梅昆布茶2
心の中の晩秋は
村雨ばかりの降りしきる
そこへ私は土足で立ち尽くし
自らを裏切り続けている
悲み屋の通り道で
一等悲しいラブストーリーを
けれどいつまでも訪れず ふっとハロウィンの
喧騒への切符を手渡される
誰、と思えばそれは夫で
彼も泣いている それなのに
私にガーゼのハンカチをくれて
ついそこで拾ったから
夢は開けて
夫が私の顔を
晴れ晴れと覗き込んでいる
起こさないつもりだったのにと懐かしい声で
心の中の晩秋に一筋の
光がそっと
少しずつもっと
わたしは靴を脱いで 夫に
しがみついて確かめる
小さなキス
一つあなたから
一つわたしから
傘のなかった侘しさはもうどこを探しても なぜって
また一つキス あなたから
一つわたしから
おはようと聞こえた
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