全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
 
んと尻からとび出す。放屁がきゃしゃな身体を震わせる。大きな川の向うの緑の茂みの中からのろしが上がる。薄暗いジャングルの中にモーターボートの音がかすかに聞える…… マラリア蚊の沈黙の羽の下で。
 大立て者は少年を自分のコックの上に引きもどす。少年はやすに突き刺された魚のように身もだえする。大立て者は少年の背中で身体をゆすり、少年の身体はくねくねと波を打ってちぢこまる。少年の死の色に包まれて愛らしくすねたような感じの半分開いた口からあごを伝わって血が流れ落ちる。大立て者はすっかり満足してぱたっと倒れる。
(ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』ハッサンの娯楽室、鮎川信夫訳)



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