全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
 
い存在なのではない。最初の段階は、人間は利害などから離脱することができ、自分の心を、混乱の中を進むための羅針盤として使うことができる、という事実を認識することである。
(コリン・ウィルソン『ルドルフ・シュタイナー』7、中村保男・中村正明訳)

 楽しみがほしければ、〈灯心草〉がいた。シロが草を食(は)み、ブロムが狩りか昼寝をしているあいだ、ぼくは、あのときブーツが教えてくれた〈灯心草〉の径を歩いて過ごした。ぼくは彼のことが好きだった。彼にははてしない数の内部があるみたいだった。そうした暗い隅や奇妙な場所で、〈灯心草〉は世界と、言葉と、ほかの人々と、知っているもの好きなもの嫌いなものと結
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