全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
 
ている。まずは性教育、感情教育をしてくれる絵本に始まって、童貞を捨てに行く売春宿の住所、初めての情婦の写真、それから結婚式の日取りが書かれた未来の婚約者の写真、夫婦の財産契約書に、結婚式の歌の歌詞……。異性愛者はただこれらの既製服を次々に着換えていればよいのだ。それは彼によく似合うが、なぜかと言うと、それが彼個人のために作られているというよりは、「彼ら」のために作られているからだ。それに比べて、若い同性愛者は棘だらけの植物に覆われた砂漠の中で目覚める……。
(ミシェル・トゥルニエ『メテオール(気象)』第七章、榊原晃三・南條郁子訳)

(…)どこへ行くのやら見当がつかない。だが状況は常に自ら新
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