さざんか/りつ
 
スクランブル交差点で
靴がかたっぽ脱げたから
たぶん明日は雨だろう

街は歩く速度で遠ざかってゆく
小路の影は濃いままに

分かっている
あなたが視ているのも
想っているのも
私じゃない
それでも寄り添いたいと願うのを
罪なことだと断罪しますか

ひとりだけの夜
あなたの声に抱かれたい
それを馬鹿だと笑いますか

夕方4時30分の
防災無線のメロディは
“ふるさと”
風もないのに
さざんかが一輪ポトリと落ちた
花のかたちもそのままに


私もあなたへ落ちていきたい


さざんかの如く
ひとに踏まれ
泥にまみれるとしても

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