結局最後/泡沫の僕
 
積まれた缶ビールを弔って
食器の過去を洗い流し
灰になった溜息に埋もれて眠った

寝不足を冷たい水で隠してみても
鏡には疲れた昨日の俺が写る

「電車とお客様が接触し…電車が遅延して…
線路から離れてお待ち下さい…次の電車も間もなく…!」

二日酔いの頭に響く、駅員の叫びに俺は思う
「結局は近づかないと乗れないよな」

続く地獄は八階建ての高層ビル
一つしかない昇降機は電車と同じ
「無理なご乗車は…次の箱もすぐに参ります…」
頭の中で呼びかける

各駅停車の昇降機
到着音と苛立った溜息
箱に反響して、耳鳴りがする

目的地に着いたと思ったら
扉の前であの娘が立ち塞がる
乗り込む彼女を避けながら
「可愛いのは顔だけだな」と睨んでみたけど、
仕事の疲れが滲んだあの娘の目元に顔を背けた

どいつも自分が一番疲れているって顔してやがる
同じ顔を鏡で見て、結局最後(始まりの朝)は
虚しくなった

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