微温湯で水死体を演じる彼女/泡沫の僕
小さな安アパート
たまに貯めた浴槽に
二人で入るのがルーティン
見て、土左衛門…
頭を洗う僕の横から聞こえた彼女のジョーク
小さな浴槽に浮かんで、演じてるんだろう
僕の泡にまみれた眼じゃ見れないよ…
彼女の愚かさゆえに二人は惹かれたのか
僕の愚かさゆえに彼女が寄り添ったのか
ゴミ以外も溜まる部屋
たまに顔を合わせて出るのは
憎悪か無関心か
見て、貴方の業
頭を洗う僕の横から聞こえる彼女の呪詛
小さな浴槽に浮かんで、訴えたんだろう
僕の欲にまみれた耳には届かないよ…
どちらの賢しさからか二人は離れ…
勢い良く吹き上げる自分の血を見て
彼女は初めて鼓動の力強さを知った
僕らはお互いのこと
何も知らなかったって知った
「この作品は20年前に書いた断片を再構成しました」
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