静かな風景/初代ドリンク嬢
 

「おとうさん」
小さなかわいい声がした
「これはなあに」
「うん、それはこの子がゆってることだよ」
お父さんは指で「この子」らしい箇所を指した
『この子』のところにはうさぎちゃんが
お誕生祝いをしてもらっていた

       病院の庭には名前の知らない
       小さな白いすずらんのような形をした花のなる木がある
       今度
       調べて娘に教える約束をしながら
       いつも忘れてしまう


病院のソファにふたり
静かに座って


       私は
       なぜだか
       涙を流していた。

戻る   Point(5)