静かな風景/初代ドリンク嬢
黒いシャツにズボンじゃなくてスラックスをはいた
あどけなさの残る女の子は
中学生くらい
うつむいて
診察室から出てきた
お父さんは座る場所を探していた
女の子は体とは不釣合いに
幼児用の絵本を
一字一字指で押さえながら
行儀よく座ってみていた
腕には注射が刺さったまま
となりには大柄なお父さん
行儀よく座って
タイマーの時間を気にしていた
二人は黙ったまま
今日はとても天気が良くて
川原の黄色い花が
「私は黄色
私が黄色よ
私こそが黄色なのよ」って声を出しているみたいだった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)