静かな風景/初代ドリンク嬢
 
黒いシャツにズボンじゃなくてスラックスをはいた
あどけなさの残る女の子は
中学生くらい
うつむいて
診察室から出てきた
お父さんは座る場所を探していた

女の子は体とは不釣合いに
幼児用の絵本を
一字一字指で押さえながら
行儀よく座ってみていた
腕には注射が刺さったまま
となりには大柄なお父さん
行儀よく座って
タイマーの時間を気にしていた

二人は黙ったまま

      今日はとても天気が良くて
      川原の黄色い花が
      「私は黄色
       私が黄色よ
       私こそが黄色なのよ」って声を出しているみたいだった



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