秋にいる/リリー
 
 夕風に舞ってくる
 モンシロチョウの薄黄色
 一雨ぬれた秋草に
 もう 雲間から
 淡いの光が差している

 こおろぎたちの戯れる
 エクスタシーにポツンと一人
 置き去られ
 三日月がふるえながら
 椋鳥たちがさざめきながら
 間もなくむこうの夜へ
 おちていく

 短い時間の音とふれあい
 その空気にとまどいながらも
 遠く来た私の足跡を
 隠すように
 秋は枯れ葉色の波になって
 寄せてくる
 
 ちょっと憂鬱な天幕のうしろで
 開いた白い拳から
 ポロポロこぼす大玉の真珠
 それは敢えて輝かないけれど
 私にとって
 身近で大切なもの
 今年また拾いあつめて
 どこかに天の裂け目をさがさなければ

 あちらの世界からきて
 悲しみを包み込んでくれる
 秋を、
 ねむらせるために
 

 
 
 

 
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