夜でなく、夢でもない。/中田満帆
 
 それはいえません。
 さあ早く、下の車に乗ってください。
はあ、わかりました。
ちょっと待ってください。
 財布と鍵を持って階下へむかった。パトランプの消えたパトカーが1台駐まっていた。男たちはわたしの背中を支えるように手をかけている。そしていっぽうがドアをあけ、いっぽうがわたしを押し込んだ。やがてふたりは前部坐席にいき、エンジンをかけてスタートを切らせた。たどり着いたのは埋立地で、そこには1台の机と、PCがある。そして書きかけの文章が表示されてあった。まぎれもない、それはわたしの遺書だった。
さて、作家さん、あんたの死に際を看取ってやるんだ。

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