夜でなく、夢でもない。/中田満帆
 
女らを愉しませようと演技していた。ずっと、ずっと、ずっとね。ほんとはわたしの心のうちを識ってもらいたかった。わたしに興味を抱いて欲しかった。わたしもけっきょくは『心は孤独な狩人』だったのだ。
 わかりあえないもののなかにいて、ただ声を奪われて、わたしは舞台に立っていた。長い芝居だった。もはや、すべてのことがどうでもいい。古い野心が胸から両手から零れ落ちてゆく。こうなるとわかっているのなら、少しでも清潔で、勤勉で、過ぎ去るものに笑みを送ってやればよかった、もちろんアルコール抜きで、だ。



 書き終えるころには朝が近かった。だが警官たちは微動だにしない。拳銃はわたしを狙いつ
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