夜でなく、夢でもない。/中田満帆
 
・ストロークがなんともいい。わたしはいともたやすく遺書を書いた。それはこんなものだった。

   *

 これがひとに読まれているということはわたしが死んだということだ。もちろん、この紙片は法的拘束力のない、ただのざれごとに過ぎない。しかし、わたしはわたしの存在について少しでも始末をつけておくためにこれを遺す。
 わたしの人生は、索莫そのものだったといっていい。多くの犯罪、多くの暴力、多くの卑語・猥語、無知の露呈、過剰な発言は幼少期に発露した疎外、暴力、無愛の賜であり、尚且つわたしの虚無を隠蔽するための行為だった。いまやわたしは長年の愛着障碍、アルコール嗜癖、浪費と蒐集によって葬られよう
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