彼女のゼリービーンズ/ただのみきや
 

夏の欠片をうかべ
すまし ふと さざめくよう
泥土の底深く
骨はさめきれず
眠りにも落ちず

昔はみな知っていた
夢の中にしまいこんだもの
首から あるいは腰から下は
獣や魚や蛇だった
へそから上が人だった
願望が想像を孵す
文明が肉体なら
文化は精神だった
動物的欲求と衝動が
へそから下の渇望が
生き胆のふるえが
人の知性と情緒をまとった時
記号は羽化し
いのちへと昇華した
ことばたちは番い
あらたな表現を生み出した

手の中でいま
ひとつのヒスイが破水する
濁り濃く
光を吸って返さず
みずから碧く含みを持たせ
瞑想する ふりかもしれ
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