彼女のゼリービーンズ/ただのみきや
樹々のささめき
秋のまなざし
土の殻を脱いで
風鈴と戯れる
あの風のよう
出奔し
残り香をたぐる
民族という幻想の
ゲル状の遺跡を渡る
無造作に繊細に
ごぜの指先の
せつなの逡巡のように
墓石に止まったアキアカネから
日の滴がしたたるころ
鼓動と思考
その果てしない乖離から
一枚の写真のよう
ことばを知らない
手紙が舞い落ちた
秋桜は
涙腺の吐く血の色をした
悲哀色の堕胎薬
わたしたちをつなぐ
血管にながれるもの
美しい蛮族の生首が生え
その唇を蜜蜂の群れが出入りする
願望が想像を孵す
沼がある
ヒスイのように
つややかに濁り
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)