響き/花野誉
 

妹とふたり
霧雨のシンフォニーホール

舞台の上はふたり
セピア色の照明に浮かび上がる

息を吸うたび
音が全身に満たされる

長く透き通る高音の波が
眉間を通過し
思わず目を閉じる

耳から吸った声は
頭蓋内に響き
体の内から溢れだす

肌にぶつかった音は
体温を上げ
総毛立つ肌身

そっと歌う声が
両肩を優しく撫でおろす
私のうなじは波立つ

伴奏は
ほぼギターとピアノだけ

響き浸透していく歌声に
知らないうちに泣いていた
初めてかもしれない

音楽というものがある
この世界に
生まれてこれてよかった






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