メモ/はるな
むすめが、ドアを開けて出ていく。あっけないくらい簡単に。あんなに気を揉んだのがばからしくなるくらい軽やかに。
でも思えばそうだった、わたしもいくつものドアを通過した。痛かったけど気にしなかった、扉の内側にいるままのほうがもっと痛いと思っていたから。
草木よりも早く伸びていく。寒くても暑くても気にしないで、すうすうしゅるしゅる伸びていく。赤ん坊のときもそうだったけど、それはわたしの腕のなかで起こっていた。今はちがう。わたしはすこし離れて、完全に違う人間として、それを見ている。あんまり伸び行くので、焦っていろいろなものを与えようとするけれども、彼女はにっこり笑って、これだけで大丈夫、あとでまたもらうね。と言う。
ドアを開けて出ていく。そして、しばらくすると汗でびしょびしょになって帰ってくる。
むすめがドアを開けて帰ってくる。それを待っているだけの女でいるわけにはいかない、と思っている。
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