琵琶湖で出遭った奇妙な人/花野誉
 
その夫君の方にちょくちょく会い、挨拶したりお話すると言う話には、皆が食いついていた。
奥方はマネキンみたいに美しいそうで、声なんて掛けられたもんじゃないと言っていた。
なにげに自慢話だった。
それでも、滋賀県と琵琶湖の香りを纏っている人には、勝手に惹かれてしまう。
自慢話も笑顔で聞けた(笑)

話が逸れた。

NとSと私で、また雄琴へ釣りに行ったある日、私は早々に飽きて、ベンチに座って、彼らが釣りに勤しむ姿を横目で見つつ、琵琶湖を愛でていた。

ふと気づくと、いつの間にか、二つ離れたベンチに、サラリーマンらしきスーツ姿の男が一人座っていた。
鞄も何も持たず、ただ私と同じように
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