書くこと。/大山猫
 
 書くことについて考え出すと切りがない。書くことは言葉の中に位置付けられるから、言葉について或る程度捉えておく必要があるが、しかしそれは途方もない相談である。
 私が作品を書くのは、文字と言葉と知の特権性、不可侵性を否定する為、言葉をして言葉たり得ない処へと赴かしめる為、かも知れない。とはいえ、問題は書かれたものを焦点としているのであって、書かれたものは―これは私の考え方だが―誰のものでもないし、そもそも何物でもない。書かれたものは或る意味では「存在しない」し、本性を有しない。内部の無い外部、外部の無い内部、疎外、欠損。
 私にとっては、自分の作品が理解されるかどうかよりも、私の作品に接した人
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