月は夜を統べる、幻想の義眼を髑髏にはめて。/菊西 夕座
は鏡となって精神を吸収する
ひとはおしなべて死にほどこしようの術はなく
つきない均整へのあこがれがみがく髑髏の姿見
うつろな眼窩に金星がうつれば「君も酔うかい」
髑髏に義眼をはめて月光が夢をみせてくれる
?.
精神は囚われながらも肉体を景勝にかえて旅をする
体の部位を思い思いに地形や建造物に転じて愛でる
たとえば私の脊髄は塩竃神社の立ち聳える急な石階段
妻になるひとと初めて手をつないで下りた縁結びの階(きざはし)
足に力を入れれば親爪が碧緑(みどり)に鎮まる火口湖となる
奥羽山脈の涼気を吸い込む胸は冴え冴えと盛り上がり
やくらいガーデンの
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