詩の動物園/ハァモニィベル
霧がためらつてゐる白つぽい湖辺で
ちぐはぐな相槌で聞く 強ひるやうに哀れげな昔語りは
日日静かに流れ去り 微睡(まどろ)む伝記作者を残して
来るときのやうに去るだらう〈静雄〉
日光はいやに透明に
俺の行く田舎道のうへにふる
俺にはてんで見覚えの無いのはなぜだらう
それで遊んだことのない 俺の玩具の単調な音がする
名のない体験の鳴り止やまぬのはなぜだらう 〈静雄〉
※ ※ ※
◆本作は『詩の博物館』「詩の植物園』に続く作品です。
◆注記は前二作と同じですので、そちらの注をご参照下さい。
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