詩の動物園/ハァモニィベル
は、ただ
頭上に生ひ伏した闊葉(カツヨウ)の思ひつめた吐息を聴いた。
蹠(あしうら)に踏む湿潤な苔類のひたむきな情慾も感じた。
原始林は無言の大饗宴。強靱な植物らの絶え間ない発汗のなかで、初日から
獣類の眠りのやうな漆黒の忘却を得た私の存在は弾力に満ちていた〈太郎〉
私はその部屋の中で蛇を見た。鷲と猿と鳩とを見た。
それから動物分布図に載つてゐる両生類と爬蟲類と鳥類と哺乳類を見た。
みんな剥製されてゐた。去勢された悪意に、鈍く輝く硝子の眼球。
過ぎ去つた動物らの霊が、過ぎ去つた私の霊を牽(ひ)いていた。
が、すべては遅かつた。私は未来を恐怖した。〈太
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