詩の動物園/ハァモニィベル
いやに透明に
俺の行く田舎道のうへにふる
俺にはてんで見覚えの無いのはなぜだらう
それで遊んだことのない 俺の玩具の単調な音がする
名のない体験の鳴り止やまぬのはなぜだらう 〈静雄〉
ここからは人喰虎が出るゆえに、旅人は昼でなければ通れない。
果して一匹の猛虎が、叢(くさむら)の中から躍り出た。
一年前、一睡してから、ふと眼覚めると、我が身は虎となっていた。
嗤つてくれ。岩窟の中に横たわつて見る我が夢を。
詩人に成りそこなって虎になった哀れな男のこの姿を 〈敦〉
ああ このおほきな都会の夜に眠れるものは
ただ一匹の青い猫のかげだ
かなしい人類
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