詩の動物園/ハァモニィベル
――― これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか〈光太郎〉
すてられた魂のうへに やさしげな嘆息をもらすのは
野をひそひそと歩んでゆく 角(ツノ)を持たない羊の群れ
むくむくと 太古を夢見てる犬よ、
お前の後足のほとりには、いつも
ミモザの花のにほひが漂うてゐる。〈拓次〉
秧鶏(クヒナ)のゆく道の上に 匂ひのいい朝風は要らない
霧がためらつてゐる白つぽい湖辺で
ちぐはぐな相槌で聞く 強ひるやうに哀れげな昔語りは
日日静かに流れ去り 微睡(まどろ)む伝記作者を残して、
来るときのやうに去るだらう。〈静雄〉
日光はいや
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