*表面張力*の夕暮れ/みずほ太陽
 

世界幻想システムの中で
金属と有機物が溶け込む砂浜のまどろみ中で
割烹着のお母さんが呼ぶ声が聞こえる
赤毛の君が涙声で歌っていた

遠くへこい、遠くへ
 ―僕を呼び止めるな
いつまでも宝石を預かっているよ
お金ではない、貴方の秘密
 ―僕は戻らなくてはならない
君の邦はこちらにあるんだよ
 ―僕の邦は、すでに繁栄しているのだ
落ちる時は呼んでくれよ
 ―うつむく

沈まない夕陽を背に
この瞬間がなぜ僕を泣かせるのか
必死に考えた記憶がある
戻る   Point(1)