夏の空白/塔野夏子
 
晴れている
蝉も鳴かない
正午

巨きな空白 が
其処に置かれたような
静寂

その静寂には
不思議な重さがある
その無が
世界ひとつ分と
釣り合うかのような

あるいは
この巨きな空白は
ほんとうに世界の消失点
なのかもしれない

蝉も鳴かない――
いずれにせよ
この空白に圧されたまま
ちいさな午睡に
落ちるしかなさそうだ


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