人の道/岡部淳太郎
 
迷っていたので
さらに迷うことにした
あえて迷って
そのままずんずん歩いていった
すると 妹をあやめ
父をあやめ 母をあやめた過去が
この生き延びてきた道の上に覆いかぶさってきた
その過去を焼いて
骨がぼろぼろに朽ちるまで火にくべて
知らないふりをした
ああ これが過ちばかりの人の道なのだなと思っていると
ぼんやりとした明日が道の向こうに
陽炎のように揺れて
そのなかに 幻のような
父母妹(ちちははいもうと)の影が
こちらを誘うように浮かび上がるので
そちらの方へふらふらと
歩きだしていった
それを信じて
一日の罪を数えて
すべてを赦す者となれ


(2023年1月)

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