美しい仮面/花形新次
 
灯火はひそかに揺れ
月は硝子のように冷たく
私の頬にかかる仮面は
夜の深みから彫られた

仮面の裏で眠る顔は
血の気を失い
かつての微笑を忘れ
遠い鐘の音だけを聞く

誰もその下を覗けぬよう
夜毎に絹糸を編み足し
夢の涙で光を塗り
黄金の縁で死を封じた

だがこの仮面はあまりに美しく
私自身も剥がすことを恐れる
もしも剥がせば――
そこにあるのはただ
灰に帰した魂の残影か
それとも
初めから顔などなかったのか

ああ 静かな夜よ
どうかこのまま
仮面の下で朽ち果てさせてくれ
美しいままで
誰にも触れられぬままで

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