そよ風によせて/室町 礼
深く潜っていると
苦しくなるのはなぜだろう
うつくしいものとは
神秘であり
畏れでもある
言葉に出来ないものに
取り憑かれて
死んでもいいよとおもわせる明け方の
紫陽花の群生
色彩の闇が
渦のように開いて
このまま
ひきずられ
消えてしまおうかと
金縛りにあったとき
小さな泡がひとつ
。
浮いてゆき
泡をおいかけて上がっていく意識が
やっと目を開かせる
青い空と
洗い上がりの雲が天上に広がるのをみて
笑った顔に
おお、なんと爽やかなそよ風が
吹いていたことか
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