「幸福の陰影」/asagohan
うっすらと額に汗で滲ませながら
水道の蛇口をひねる
顔の見えない女がちらつく夢
涼しげな紺のワンピース
夏なのに日焼けしてない白い肌
私はせり上がる何かを思い出しかけている。
蝉の声がやけに大きいと思って
ふりかえるとベランダに女の影が立っていた。
「どうして、そんな姿で現れるんだ。」
・・・どうせならば
姿を現してくれとそう願った。
「あなたが逃げたの、幸福から...」
そう、冷たい声が部屋中に響くと
逆光で伸びた女の影が私を呑み込んだ。
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