海辺/リリー
に帰ったあと
海に沈んだ話
こんなのよりも
もっと もっと青い海だと
老人は語る
降りつづけるマリンスノーが
白い珊瑚礁を形づくり
錆びついた古い軍艦の残骸は
かなしみの骨格をみせて眠るのに
目のない魚のかすかな震えで
ほら、やはり
ぎしぎしと軋みはじめる
??
きのうは凪いでいたのに
今日は荒れてる
紫色の脛をむき出した少年が
掌を空に向けて
立ちのぼる焔をみる話
蒼黒い波のしぶきに
少年の激しい血汐が天上へ
舞いあがってゆくのだ
焔のなかに確固として張りついている眼が
どん欲に光ろうとする
その美しさに
ほら、やはり海が鳴りはじめる
??
小さな湾だ
家の影も見あたらない
波の誘うまま、女と老人と少年は
思い思いに呟きあっていた
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