たどる/石川和広
 
落っこちたのに
僕は生きていた
確かめるものはなく
暗い陥没点から深く
上空
光の一点を見つめていた

ねじれない空気
透き通る闇
すすけた壁
恐いのにただぼんやりしている

生きてきた道をたどる
幾百ものストーリーの束がねじれている
ここへ落っこちたのははどういうわけだ
わからない
考える考える
いくつもの悔い
閉じられた時間
広がる瞬間
収縮する思い出の手のひら
美しいときは忘れ去ったわけではない
ねじれている束
ねじれている中

何も間違いない
何もかも間違っていた

ぼくは生きていた
透き通る暗闇に取り囲まれて
ぼんやりと




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