臆病者のブルース/栗栖真理亜
 
今日が終わってしまう
楽しかった今日は終わり、明日が来てしまう

あの強烈な午後の日差しも
自転車で駆けた土手の道も
青々とした草の匂いも
自転車を漕ぐ度に噴き出す汗も
食べ物屋の店内で笑い合った顔や声も
胃袋へ吸い込むほど美味しく食べた感触も
明日になれば嘘のようにかき消されてしまう

いま電灯を消して瞼を閉じてしまえば
夢に魘されている内に明日が来て非難と軽蔑と罠とが私を待ち構えている

それでも勇気と云う気付け薬を飲んで
どうなるのか解らん混沌に立ち向かわなくてはいけないのか
恐ろしさに震える心をひた隠しにして

涙で濡れるかもしれない頬を自ら打ちながら今日が終わり明日が来る
そんな当たり前の出来事がいまはとても怖いのです
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