そして僕の隣に君はいない。/栗栖真理亜
軋む心が君を求め
カサついた唇が君の名を何度も求め続ける
溶け合う闇の隙間に君の影を見たような気がして
思わず夜風に靡く透けたカーテン越しの白い窓に目を凝らす
どんなに待っても君は帰ってこないのに
どんなに祈っても君は立ち去ったままなのに
僕は待ち続けている
こうして息を殺し耳を澄ますと静かな真夜中(よる)の街では
車のクラクションやエンジン音がかすかに鳴り響いている
まるで僕の哀しみを奏でるかのように
行き場のない想いばかりが僕の頬を涙で濡らすけれど
君を愛する罪さえ神からは許されはしないだろう
萎れた魂(いのち)のその欠片さえ君に与えることさえ出来れば
僕と君は硬く結ばれた絆をそのまま保ち続けられたのに
もう僕の隣には君はいない
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