Bonjour/浅い殴打
 
Bonjour
昨日はとても
辛い日だった。
世界中のふしあわせを
全ぶ、
つめたような。
髪の毛、からする
シャンプーの匂い
「誰でも悪い
夢くらい
見るものよ」

爪をはがそうと
藻掻いていた
彼女の横でぼんやり頷いてた

Bonjour
昨日はとても
辛い日だった。
世界中の悪い夢が
斧を齧り、
追いかけてくる
マニキュアからする
赤い血の匂い
「誰でも悪い
夢くらい
見るものよ」


剥がれた生爪そのペンキをたどって

じっとり汗ばむ
握った指紋が潰される


Bonjour
劈く悲鳴で目が褪めた
「昨日あんな態度で悪かったよ」

既読の葉が散る
ハラリ おともなく
留守番電話に警察署から

駅の白い歯に
噛み殺されて
間に合わなかった
あしあとが濡れる


Bonjour
昨日はとても
辛い日だった。
重ねたインクもう
赤く滲む
瞼を綴じたら
涙のかわり
「昨日あんな態度で
ほんとうに
申し訳
ありません」
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