惹句で満たして 1章/浅い殴打
 
めると 思われている。
嗅ぎ取った倦怠感を 人質に
わざと距離をちぢめている

あしおとが 惹句のように響き渡る。

「最近厭きちゃったなぁ彼にも」
指を 動かしながら、
手際よく 書類を無言で裁いていく。

その細い眼鏡の淵には
昨晩彼とした行為の唾がまだ
糸のように
へばり付いている──
捲ったブラウスから
彼女の手首に噛み跡が見えた。
一昨日の「秘密」がまた
動き始める。

………………

「そんな瞳でみて
一体どういうもり?
…誘ってるの」

「見てません……」

「うそばっかり」
グロスのたっぷり塗られた
唇がぷるぷると秘密をのせ
[次のページ]
戻る   Point(5)