耳の奥の小さな灯り──聴こえないはずのものがふと灯る、感覚をこめて……/大町綾音
 
ただ、いっしょに沈黙してくれる音楽。

 音楽は、ひとりぼっちのためのものだと、昔は思っていた。でも、いまは少しだけ違う。ひとりでは届かない感情に、音が橋をかけてくれる。そして、そこを渡ってくるのは、ほんの小さな「わたし」──もしくは、心の中でそっと呼んだ「あなた」かもしれない。

 だから、もう一曲だけ、ブライアン・イーノの『An Ending (Ascent)』を。宇宙から降ってくるようなサウンドは、聴く者の心に「境界のなさ」を思い出させる。死と再生の間に漂うようなこの音は、怖さではなく、許しを含んでいる。あなたがどれほど疲れていても、もう何も求めたくない夜でも、この曲は「まだあなたで
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