鈍い夜の後の幻想/ホロウ・シカエルボク
 
かく、尤もらしい大げさなことを言いたがる、でも実は、大人の条件なんていうのは細やかな出来事の中にこそある、剃刀で髭を綺麗に剃ることが出来るとか、手を洗う時に爪まで綺麗に洗うことが出来るとか、インスタントコーヒーの粉の量と湯の量を毎回ばっちりなバランスで入れることが出来るとか…信号をきちんと守れるとか、本屋の通路では鞄を邪魔にならないように自分の脇に持ってくるとか、それが大人になることなのだと思う、社会的地位が高いとか、金を沢山持っているとか、そういうことでは決してない、それは俗物として秀でているというだけのことだ―すべての動作には成功体験と失敗体験というものがある、その蓄積の中で、どうすればより上
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