「砂時計」/ベンジャミン
 
こぼれおちてゆく
砂の一粒一粒は
空白を埋めるように
足元に降り積もる

ひとひらまたひとひら
音もなく淡雪に似て
けれどそれは
削られたあなたの欠片だから
冷たさにひるむことなく
受け止めていきたいと
強がるあなたの
そんな脆さを隠すように
雪が時が静かに覆ってゆく

やがて白い砂は尽きて
お互いの季節が
噛みあわなくなるとしても
砂時計を逆さまにして
冬を作り出せば
積み重ねた過去が
融けることなく今に変わってゆく

この瞬間を思い出と呼ぶようになる
いつかを想う時
まるで万年雪のように
記憶を閉じ込めたまま
こぼれおちてゆく
涙それさえも

きれいな結晶に変えながら
消えることなく増してゆくのだと


     
※連詩 1人2行7巡
 ザラメ→ベンジャミン
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