稲妻の記/栗栖真理亜
 
まるで待ってましたといわんばかりに
横殴りの雨が僕の肌を情け容赦なく突き刺してゆく

我が身をかばうように頭の上を両手で押さえ
出来るだけ速足で歩こうとするのに
脚が絡まって思うように巧く前へは進めない

雨はますます激しくなり
アスファルトに跳ね返る雨音が
僕を嘲り笑うかのように僕の耳をつんざいてゆく

僕はぐっと憤りを抑え
渇いた瞳で灰色に濁った無常の空を仰ぐけれど
それでも雨は止む気配すらない

あぁ、遠くで雷鳴が聞こえる
腹の底から響くような微かな轟は
今にも挫折しそうな僕の弱き精神(こころ)を奮い起たせてくれる

そうだ僕にはまだ光がある
可能性と
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