花のあとさき/そらの珊瑚
 
じいさんだったという
犬の散歩している姿を何回か見かけたことがある人かもしれないと思った
もふもふの大きな白い犬だった
おじいさんと同様に気の良さそうにゆっくりと歩いていた

満開に近い桜の花を風がゆらしていく
天国だったら永遠に散らない花でいられるのかもしれないが、ここでは叶わない願いだ
春はさわめく
心もさわめく
散った桜のはなびらを拾ってはポケットいっぱいにした今となっては遠い日
あのはなびらはどうしたんだったっけ
思い出せない
思い出せるのは、死んだばかりのつめたい花の柔らかさだけ


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