初雪/山人
モザイクな彩が静かに交接していた
気がつくと薬缶の水が沸き、蓋を押し上げる湯気の音が厨房に響いている
朝からこのように、厨房仕事をしているのはいつ以来だろうかと、記憶をたどる
見えるものが、一様にすべて白く塗りつぶされていく
そこに何かがあった痕跡は突起としてわずかに感じられる
それは三つの季節を流れた時のひらきなおりとあきらめであり
どこかの土の一片の微粒子として
存在し続けているであろうあの老夫婦の所作を思い出していた
むしろ、雪は終わりの季節ではなく、はじまりの季節なのかもしれない
2014年11月作
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