幻影の城/栗栖真理亜
 
隙間風のように通り過ぎてゆくよ
まるで夢から醒めた夢の続きが悪夢であるかのように
君はビッショリと冷や汗をかき
また幻をみようと見えない虹の行方を探している

君のなかに棲む幼子が泣き叫びながら
記憶の片隅に置き忘れた飴玉を掴み取ろうとしているけれど
甘酸っぱい副産物は君の手にはおさまることなく溶けてなくなってしまうんだ
うなだれた君の瞳は叶わぬ真の欲望を『もはやこれも夢なのだ』と諦めて
沈痛な面持ちで深い溜め息をつくけれど
うずくような傷みが日常の鮮やかさすら吹き飛ばし
憂鬱な気分を増幅させてしまう

僕は君を助け出したい一心で手を差しのべるのに
君は凍った手の平で無
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