肋骨のうた−Музыка на рёбрах/佐々宝砂
 
私の肋骨は歌わない
田舎の整形外科の
ものさびしいレントゲン室で
私の第8肋骨はぽっきり折れた姿を晒す
でも私の肋骨は歌わない

だってここは21世紀の日本だから
20世紀半ばのソビエト連邦じゃないから

そのむかしソビエトでは
いろんな音楽が禁じられてたから
自主出版とか自主製作レコードとかあったんだって
牧歌的な話じゃないよ
見つかったら逮捕されてシベリア行だよ
自主製作レコードはレントゲン写真を再利用したから
通称肋骨とか肋骨音楽とか骨のジャズとか呼ばれたんだ

という話を私は四半世紀前のテレビ番組で見たのだった
それほどまでに音楽を聴きたかったのか

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