金の斧と銀の斧/鏡文志
 
所まで自分も同じ鉄の斧を持ってきて、
「エイッ」
と鉄の斧を湖に向かって、投げました。すると再び、湖から水の精が浮かんできて、こう言いました。
「おばあさん、貴方が落とした斧は、この金の斧ですか?」
「いえ、私が落としたのは、そんな美しい斧では、ありません」
「では、貴方が落としたのは、この銀の斧ですか?」
今度は左手で銀の斧を差し出し、おばあさんに見せました。
「いえ、私が落としたのは、そんな上等な斧ではありません」
「うーん、目の前の悪いおばあさんや!」
水の精は今度は、自分の頭の上に突き刺さっている鉄の斧を抜き取ると、こう言いました。
「貴方が落としたのは、この鉄の斧ですか?」
頭を真っ赤にして、戦慄いている水の精を見て、正直なおばあさんは、震えながら、こう答えました。
「ハッ、ハイ! 私が落とした斧は、その鉄の斧です」
その後、お婆さんがどうなったかは、とても言い表すことが出来ません。正直もほどほどに。人間はある程度フラットがいいですねと言葉を残してこの物語を終えたいと思います。
戻る   Point(3)