金の斧と銀の斧/鏡文志
言われて水の精は、また渋々水の底に潜り、また浮かんできて
「今度こそおじいさん、貴方が落とした斧は、この鉄の斧ですね?」
そう言われて、おじいさんは
「いえ、私が落とした斧は、もう少し先の欠けた鉄の斧です」
「面倒なお爺さんだ。そんな先の欠けた斧で、木を切ってるんじゃあねえよ」
水の精は途端に不貞腐れ、二度と湖の底から戻ってくることは、ありませんでした。
その話をおじいさんから聞いた、これまた正直なおばあさんは
「そんなおかしな話が、ありますか? 最近は水の精までケチになった。その話が本当かどうか? 私が確かめてやります」
そう言っておばあさんは、おじいさんが斧を落とした場所ま
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