3月初めのメモ/由比良 倖
 
鞘炎になる前にリストバンドを着けた。
音楽を聴いていると、ときどき昔の気持ちを思い出す。大抵はとても寂しい気持ちだ。死んだ祖母のことと、誰も友達がいなくて、友達になりたいと思える人もいなかった十代の初めの頃の、どうしようもなく孤独で、とにかく周りに合わせようと必死だった日々を思い出して、そして無理に付き合って友達の振りをしていた奴の顔を思い出した。相手の方も多分僕に無理して付き合っていたんだろうな、何故なら高校生活で誰も話し相手がいないのは致命的なことだから、と思うと、詩を書きたくなった。
僕は中学二年の頃、本当に誰とも話さなかった。家族はいないのも同然で、父は僕を見れば説教をして、母はおろお
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